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このたび思文閣銀座におきまして、「初見 石川九楊展」を開催いたします。
60年にわたり「言葉を書くこと」を通して常に時代と向き合い、唯一無二の書表現で、
新たな書の地平を切り拓いてきた石川九楊。その制作と批評活動の密度は驚くべきものです。
本展では、1970年代から2000年代にかけて制作された未発表作品を中心に、
これまで展覧会などで紹介されることのなかった作品群を、作家本人の言葉とともにご紹介いたします。
「文字は立体であり、書は筆蝕の芸術である」と語る石川九楊の世界。
その深みと広がりをぜひご堪能ください。
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2025年9月29日(月)− 10月24日(金)
10:00 − 18:00
日祝休廊
作家在廊予定:10月6日(月)午後
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ことばを書くことにどんな意味があるのか。
紙・筆・墨の表現はどんな可能性を有しているのか。
書の領域はどのように拡がっているのか。
――その〈解〉を尋ねての制作の中から、
「はじめまして」の作品を東京銀座五丁目思文閣で。
石川九楊
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谷川雁 無〈プラズマ〉の造形 1976年
熱狂的な編集者が私家本として発刊した谷川雁の未発表評論集『無の造形』の表紙装幀のために書きあげた作。谷川雁の詩や文の一節をコラージュし、これに補助線、塗りつぶしなどを援用、灰色に染めた紙に書きあげることによって谷川雁の表現思想に少しでも近づかんと試みた。
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こうまでしても救いようのない人間にやりきれない疲労静かな絶望的な優しさ 1981年
「やりきれない疲労」の風景を、脱力しきった筆蝕と大きく間をあけた構成で書かんと試みた。「静かな絶望的な優しさ」の箇所は書いて黒く塗りつぶした。書き切った完結感は句の世界にそぐわない、未完の風景を欲したのだ。
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落書演習 1981年
「自動記述」とでも言うべきか、心に浮かぶことば〈漢字語〉を、企らまざる筆蝕、成り行きまかせの構成で次々書き綴り紙面をうめていった。周囲を墨で汚すことによって、意識と前意識のあわいから生まれた雑多な単語の落書が、ひとつの完結した語彙集として姿を現わした。
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拒絶 1981年
先行し先に場を占めた墨の字画は後行する字画に場を与えない。したがって後行する画は先行する画の背後にかくれることになる。その立体化書法を援用して、時代の空疎な流行と冗言を「拒絶」するという意を表現せんと試みた。
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大道無門 1982年
大いなる道には門は無い――門が無いのだから大いなる道に入ることは困難だとも、またきめられた門などないのだから、いたるところに門があり、どこからでも入れるとも考えられる。大いなる道と言ったところで、まっすぐとは限らず、細く迷路のように、曲がりくねったものかもしれぬ。
その多義的な四字句を、右の作は真正面を向いた左右対称くずしで、左の作はその不定形に的をしぼって書きあげた。複雑な意味から成るこの句には、ああでもない、こうでもないとさまざまな表現で迫った。
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源氏物語II 早蕨 1995年
作品名としては「源氏物語II」となっているが、菊版半截(47×61)のこのIIシリーズが先に書かれた。五十五帖からなる源氏物語の各帖の話は各々独立しておりながらも連続し展開をとげている。
書もまた同様。前帖までに次々と開発された水平、垂直、折線化した波動、それにひねりをまじえ根こそぎの掘起しの筆蝕を重ね、「中の君が匂宮に迎えられ、花の盛りに薫が中の君と対面した」早蕨の帖の世界を織りあげた。
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展示作品
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石川九楊
書家
1945年福井県生まれ。京都大学法学部卒業。京都精華大学教授、文字文明研究所所長を経て、現在、同大名誉教授。「書は筆蝕の芸術である」ことを解き明かし、書の構造と歴史を読み解く。評論家としても活躍し、日本語論、日本文化論は各界にも大きな影響を与える。作品制作・執筆活動、いずれの分野でも最前線の表現と論考を続け、制作作品は2,000点以上、著作刊行は100点を超える。2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の題字を揮毫。
石川九楊を知る
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展覧会概要
会期
2025年9月29日(月)− 10月24日(金)
10:00 – 18:00 日祝休廊会場
思文閣銀座
〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目3番12号
壹番館ビルディングお問い合わせ
Tel: 03-3289-0001
Email: tokyo@shibunkaku.co.jp
初見 石川九楊
Forthcoming exhibition