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Artworks
徒然草 No. 16 1991年
書き進めるうち、徒然草の書の表現は抽象性を帯び、全文は「心にうつりゆくよしなし事をそこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものくるほしけれ」の冒頭句に収斂してきた。
点画、文字を書きつけていく速度とそこに生れる字姿は密接に結合している。この速度と字姿の自然な結合を解体分離し、新たな再結合を試みた。書字速度を高めることによって得られた「徒然草 No. 10」の字姿を、極限まで遅くした書字速度で再現を試ることによって「徒然草 No. 11」は生まれた。この作から書くことが、一段と「もの狂ほしく」なってきた。
五尺×七尺(147×209)の雁皮紙を特別に漉いてもらい、制作のためにメゾネット式の部屋を借り、一日書き終えると二階から一階の作をためつすがめつ俯瞰し、次なる展開を思い描くという日を六ヶ月かけて書きあげた。「もの狂ほしさ」の生れる、かすかな波動の世界へと表現は近づいて行った。私にとってとてもいとおしい作である。
雁皮紙・墨 額装
Ink on vellum paper, framed
147 × 209 cm
148 × 210 cm (全体, with frame)
雁皮紙・墨 額装
Ink on vellum paper, framed
147 × 209 cm
148 × 210 cm (全体, with frame)